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自然との距離感

  こんばんは, シンです.
最近髪がウネウネなので美容院に行きたいのですが, 残念ながら私がいつも行く美容院は休業中…しかもその町は休日に今だに人がたくさん出歩いている!!と大きく批判されています.
周囲の批判自体はどうでも良いのですが, そんなに人が出歩いている町に行くのは少し気が引けますよね…
さあ今回も一つのテーマについてのみ語ります.
ズバリ, 「自然と人間の距離感」についてです.
実はずっとコロナに関係ないトピックで語りたいと思っていたのですが, そのトピックが一々重くて, 色々エビデンスを調べるのに一苦労していました.
ですがこのトピックを考えついてからはスラスラ作業が進んでいます!
(その他のトピックも下調べをちゃんとやりますよ)

 昨日, NHKスペシャルで『ヒグマと老漁師』と言う特集を観ました.
この番組が非常に秀逸だったので少しご紹介します.
https://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2020-04-19&ch=21&eid=15704&f=46
知床に住む84歳の老漁師が, ヒグマをこらっ!と叱りつけるシーンがなんとも面白い番組です.
ご存知の通り, 知床はUNESCOの世界自然遺産に登録されています.
世界遺産に登録されると, UNESCOから色々口出しされるわけですよ.
自然の景観や生態系を保つために, 橋や道路を撤去しろ!とかなんとか…
漁師さんからとったら, その道路は仕事(漁や物資輸送等)で使うため, 非常に大切なものなわけですね.
当然, UNESCOの委託を受けたアメリカ人の環境保護活動家の人と漁師の話は平行線を辿るわけです.
そこで, その話し合いの場所である川原で, アメリカ人には驚きの光景が写ります. なんと人のすぐ近くまでヒグマが訪れて, 人を襲うでもなく, 怖がるでもなく, ノソノソと歩いているのです.
アメリカでは考えられない光景に, そのアメリカ人活動家もびっくり.
人間と動物, 人間と自然界の距離感, これは俺たちの持っている概念と違うぞと.
この人たちはもしかして, 上手く共生しているのでは?
と言う考えが生まれます.
このシーンを観ていて, あー, 確かに日本人古来の自然との距離感は独特なものだったなあと, ふと色々なことを思い出しました.

 まず思い出したのが, 2年ほど前に東北の某所でマタギ体験をした時のこと.
ここでは実際にマタギの方の家に泊まっていたので, マタギの歴史や, どのような思いで猟をするのかを聞く機会に恵まれていました.
もう記録が残っているか定かではない古来から, その地ではマタギをしており, 山の命を戴き, 山の自然に感謝し,自然を畏れ, 山で祈りを捧げ, 山に還元し, 自然と共に生きているのだと聞きました.
ちょうどこの数ヶ月前に, 古事記や日本書紀等を猛烈に勉強し, 海外の青年に日本文化として, 「人間は自然を畏れ, 自然の下に生きてきたんですよ」と言う発表をした後だっただけに, かなり身に沁みたのを覚えています.
コンセプトとして, 字ズラで考えていたものに, 生の体温を吹き入れられた気がしました.

それはそれは, 雪の深い場所でした.
ここでウサギとか追い回したなー.

 少し脱線しますが, ジブリの名作『風の谷のナウシカ』と『もののけ姫』を観られた方も多いと思います.
どちらも主なテーマは自然との共生ですよね.
ここでは語りやすいので主に『もののけ姫』について語ります.
物語の中心となるたたら場. これは中世に日本中に実在した, 製鉄所のような場所です. 砂鉄から鉄を取り出す場所であり, 大量の木炭が必要となるので, 木を切り崩すんですね.
それで森を破壊した人間に対して, もののけ(動物達や自然)が逆襲をすると言うストーリーです.
シシ神様たちがタタラ場を襲った後, その地には自然が戻ります.
タタラ場はまた町を興そうと, サンたち(自然側)はまた森に帰る.
その間を今後も頑張って取り持とうとするのはアシタカと, という奇しくも東の未開の地(エミシ)から来た若者. という象徴的な終わり方でした.
詳しく見ると, 新たに生えてきた木々は元の原生林ではなく, 雑木林なんですね.
雑木林と言うのは, 人の手によって管理された森なんです.
ここに, 共生の難しさを物語るものがあるな…としんみりとします.
ちなみに『風の谷のナウシカ』では, 王蟲たちがRock the worldして人々をdominateすることから(ナウシカの存在のお陰で最終的には森に帰って行きますが), 「自然崇拝」の姿勢が最後まで貫かれます.
ここに宮崎駿先生の初期作品と, その約10年後に出るもののけ姫との間の大きな違いがあります.

https://cinema-press.com/?p=1040

 このジブリの例を長々と書いて何を伝えたかったかと言うと, 日本には古来から, 独特の自然と人間との共生の仕方があったんですね.
それこそ, キリスト教文化圏のような「人間>動物」みたいな世界観に生き, 動物からは必ず安全な距離を確保する様な人からは理解できないような, アニミズムならではの素敵な世界観があるわけです.
知床の老漁師も, あれはアイヌの影響なのか古くからの日本文化の名残なのかは分かりませんが, 感覚的に日本人が共感できるであろう, 特に馴れ合うのでもなく, ただお互いに敬意を払い合っている様な, 不思議なヒグマとの距離感の中に生きている方でした.
ちなみにアシタカもエミシ(蝦夷)という, 当時北方の地を指す意味の土地出身です.
都会に住んで潔癖症のお前が言うなという批判は甘んじて受けますが, 今回自分の身の振るい方を見直すきっかけになりました.
この投稿が, 読者の皆さんが自然との距離感を見つめ直すきっかけになれば嬉しい限りです.

 最後に参考文献の紹介です.
①浦谷年良『「もののけ姫」はこうして生まれた』
https://www.amazon.co.jp/-/en/dp/4198609306/ref=sr_1_8?dchild=1&keywords=%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%AE%E3%81%91%E5%A7%AB%E3%81%AF%E3%81%93%E3%81%86%E3%81%97%E3%81%A6%E7%94%9F%E3%81%BE%E3%82%8C%E3%81%9F&qid=1587311344&s=instant-video&sr=8-8
もののけ姫の背景や裏設定などが分かって楽しいです.
もののけ姫は今回語った主題だけでなく, 人身売買, ハンセン病差別など, 現在でもホットなテーマが散りばめられた奥深い作品だということが分かります.

②柳田国男『山の人生』
https://www.amazon.co.jp/-/en/dp/400331381X/ref=sr_1_1?dchild=1&keywords=%E6%9F%B3%E7%94%B0%E5%9B%BD%E7%94%B7+%E5%B1%B1%E3%81%AE%E4%BA%BA%E7%94%9F&qid=1587314818&sr=8-1
それこそ民俗学的に, この山で生活する人々の生活や, 伝説・伝承をまとめている紀行文の様な作品です.
一緒に入っている『遠野物語』はもちろん民俗学の基本書です.