こんばんは, シンです.
大変ご無沙汰しております.
プライベートの方で大変で, また暫く時間が経ってしまいました.
まだまだプライベートの方も落ち着きませんが, 書かないわけにはいかない大変な大事件が起きてしまったので書きます.
ズバリ今回は, 昨日未明に起きたミャンマーのクーデターについてです.
まず1. 概要 について, その後2. 簡単な解説をしていきたいと思います.
まず1. 概要について.
今回の事件は, まず正確に言うとクーデターではありません.
別に大差はないのですが, 一応国際関係学および地政学などに関わる人間として, そこは明確にしておきたいと思います. 英語, もしくはスペイン語ではpronunciamentoと言います(日本語で何と呼ぶかは知りません).
世界三大戦略家の一人かつ, 世界唯一と言って良いであろうクーデター研究者のエドワード・ルトワック(Edward N Luttwak)氏もTwitter上でそのように述べています.

クーデターと言えるほど計画性があり賢いものではなく, 単に軍隊が議会などに侵攻しただけのぬるいもんだと言うのが氏の考えでしょうか. ※この点, 後で加筆・修正します
この細かい話は置いておいて, ことのあらましを簡単に書きます.
簡潔に書くと, 昨日2/1の早朝にミャンマーの軍隊が国家顧問のアウンサンスーチー(Aung San Suu Kyi) 氏やウーウィンミン (U Wint Myint) 大統領などをはじめとした政府側の要人を取り押さえ, 権力を掌握したということです.
これに伴い1年間の緊急事態宣言が発令されており, 副大統領のユーミンスウェ(U Myint Swe)氏が一旦大統領として君臨するらしいですが, 実質的には軍トップのミンアウンフライン(Mint Aung Hlaing)氏が握ります.
報道を見る限り民間人に死傷者が出ているという話はまだ出ていないですが, 首都ネピドーや中心都市ヤンゴン(ラングーン) では軍が道路を封鎖し, 議会なども抑えているようです.
また夜8時以降の外出を禁止したと, MRTVという国営テレビを通じて伝えた様です.
本来MRTVは国営テレビであり軍とは一線を画しているものでしたが, 現在では軍の持っているMWDと同じ内容を報じている様です.
ちなみに現在は国営テレビ以外の民放は見られなくなっている様です.
一時はネットワークも使えなかった様ですが, 現在は復旧しています.
https://www.mmtimes.com/news/myanmar-announces-state-emergency.html
https://www.bbc.com/news/world-asia-55882489
(一部現地の友人情報)
次に2. 簡単な解説をします.
なぜ起きたのか, なぜこのタイミングなのか, 何がしたかったのか, このクーデターの評価について語っていきます.
経緯は簡単で, 昨年11月8日に行われた総選挙において, アウンサンスーチー氏が実質的に率いるNLDという政党が約8割もの得票を得たわけですが, それに対して軍はかねてより不正を主張しておりました. そして残念ながら彼ら軍の主張は既に選挙管理委員会によって却下されています.
アメリカ大統領選におけるトランプ陣営と似ており, 彼らは正式な司法の場において決定的な証拠を提示できなかったわけですが, それでもあいも変わらず不正を主張し続けていたわけです.
その不正選挙を主張していた急先鋒が新しく大統領に就任したウーミンスウェ氏であり, 元副大統領です.
彼は元々軍の高官であり, 軍の後押しによりスーチー政権でも副大統領の座に就いた人です.
https://www.irrawaddy.com/news/burma/myanmar-military-seizes-power.html
そしてタイミングも簡単で, ちょうど昨日2月1日が新しい会期初日だったからです.
ここで何もしないで2月1日を迎えるということは, 実質的に選挙結果を認め敗北宣言をしたに等しかったわけです(実際に敗北したんですが, トランプ陣営のQアノンやクラーケン信奉者達の様に, 事実や理論などは通じません笑).
しかしながら軍がこのクーデターを起こした理由は何だと聞かれると, 正直「分からない」というのが本音です.
上記の様な事情により, 彼らにとって喜ばしくない状況であったことはご理解いただけたかと思いますが, わざわざクーデターを起こす必要があったのか, クーデターを起こして何を実現したかったのかは微妙です.
というのも, 2008年に施行された憲法によれば, どれほどNLDが人気を博しても軍は25%の議席は担保されているからです. そして憲法改正には75%の賛成票が必要であり, 軍の中から造反が出なければ憲法改正などできません.
実際2015年にも選挙がありNLDが大勝しましたが, 一応NLDは法を遵守する意識があるので, しっかり25%の議席は軍が持っておりました.
NHKのバンコク支局の人が, ロヒンギャ問題で海外からの投資が滞っていることに軍が見切りをつけたと言っていましたが, 全然納得できません笑 彼は本当に軍と中国の関係, 西側諸国とNLDが歩んできた民主化の歴史を知っているのだろうか…
BBCではそれでも驚きとして捉えているとは結んでいるものの, 国の父たる軍が選挙でここまで大敗するとは思っておらず, 恥をかいた軍が躍起になってクーデターを起こしたと解説しています. いや, そんなことでこんな国民をますます敵に回す行動を起こすだろうか…
戦前の日本で起きた2. 26事件も似た様なクーデターですが, 今回の件と決定的に違うのはしっかり軍のトップの人たちが先導している形になっていることです.
一般的に軍のトップの人たちは実際の戦場の凄惨さを理解しており, また賢い人たちなので感情に流された非戦略的かつ過激な行動は慎む傾向にあるというのが世界の常識です.
ということで, 正直あまりしっかりとした理由は分からないというのが現状です.
さあ次にこのクーデターを戦略的, 戦術的な観点から評価してみます. ※この章は後に加筆・修正します.
まず戦略的に言うと, 彼らのモチベーションが分からないので, はっきりしません.
明らかになっている情報だけを元にしている限りは, 今回クーデターを起こしたこと自体が戦略で負けているので軍になっているプラス要素はありません.
具体的には, 国家のシンボル的存在であるスーチー氏を捉えたこと, 国民に多大なる迷惑をかけていること, そして憲法が改正される恐れが低いということが挙げられます.
少し陰謀論チックな仮説に基づいた戦略の考察は, 次項に譲りたいと思います.
戦術的には, 冒頭でも述べた通りこれは学術的にクーデターではなく, pronunciamentoと呼びます.
これは聴き慣れないものかとは思いますが, 90年代に南米で起きた物が近く, 軍全体が国家権力を奪うことを指します.2014年にタイで起きたものもこのpronunciamentoに入ります.
クーデターは2.26事件や2016年のトルコで起きたものがクーデター未遂と呼ばれるもので, イメージしやすいかと思います.
こちらは軍全体ではなく, 軍の中の一部が反乱を起こし, トップだけを代えて基本的な国家の運営組織や方法などは変えない物を指します.
ちなみにクーデターが成功し, 彼らの実現したい何かしらが達成できる可能性が低いですが, 今後の進み方次第では案外統治を長引かせることはできるかなと思っています.
現状のショボいところは, ここまで国民を敵に回している事実, 情報統制が甘い, 国家のシンボルたるシュウェダゴンパゴダを占拠していないこと(報道を見る限り)などが挙げられます.
逆に現状で優れているところは, 空港を封鎖し占拠していること, スーチー氏を捕らえていることなどでしょうか.
今後はSNSを禁止にし, 今やっている通りの国営テレビのみを続けること, 中国の全面的な支援を受けること, シュウェダゴンパゴダを占拠し, スーチー氏に軍による統治を認めさせることができれば, 案外成功する可能性はあるかと思って見ております.
簡単にそれぞれ解説すると, 国家のシンボルを陥すことは国民の心を挫くのに有効です. 空港を封鎖することは敵対的な外国勢力(ここでは主に西側諸国)の排除に有効です. 情報統制の効果はお隣の中国をご覧頂ければ明らかです.
案外西側諸国を中心とした国際社会からのバッシングおよびFDI(対外直接投資) の減少は大きな影響を与えないかなと思っています. もちろん国民生活の水準と国民感情は悪化するでしょうが, 何十年にも渡って西側諸国と断絶し中国とのみ非常に仲良くしてきたのが軍です. また経済発展は民度を上げてしまうので, 国民が貧しい方が軍としては打倒の対象にならなくて良いのです.
クーデターの技術的な話については, 前述のルトワック氏のクーデター入門を是非お読み頂ければと思います.
※追記(2021. 02.24) クーデターの戦術的な部分に明らかな認識違いがあったので, 加筆・修正しました.
さあここまで見てきた様に, まだ何が起きているのか, 何がしたいのかははっきり分かりませんが, しっかりと続報も注視していきたいと思います.
日本人にとっても決して他人事ではありません.
このまま軍の統治が続くことは, 前述の通りミャンマーがますます中国に飲み込まれる可能性が高く, またお互いに接近するだけのモチベーションがあります.
一般論として私は独裁が100%悪で民主主義が完璧だなどのナイーブなことを言うつもりはありませんが, 今回はミャンマー国民のほとんどが反対しているという点で, 精神的にはミャンマーの民主化を後押ししていくべきでしょう.
ただ, そのプロセスの点では様々歴史的な背景などがあり, 完全にNLDのみを支援すれば良いというわけではありません.
この支援のプロセスについては次項で詳しく書きたいと思っていますが, まずは私の以前のポストをご参照頂ければと思います.
最後に, ミャンマーの自由と民主化を祈念して結ばせていただきます.
また次のポストでこの話題について取り上げていきます.
#justiceformyanmar
#save_myanmar


